本当は今だってそこで隠れて様子をうかがってるんだろ?


長澤杏奈さん。』


智也と私が驚く間もなく、花巻は証拠の提示を始めた。


『まんまと引っかかっちまったよ。最初に不破椿がカンニングと言ったから、そこしか見てなかった。盲点だったよ。』


なるほど、と納得をしていると、隣に立っている智也が、なにかひらめいたかなような、仕草をした。


『そうだよね…
まず一番最初に疑うべきところは、そこだったんだ。
普通は上位から落ちた4位のカンニング疑惑と、下位から4位へのジャンプアップのカンニング疑惑だったら、後者の方が怪しいんだ。』


智也のあとに花巻が続く。


『ああ、そうだ。
長澤は被害者という立場を巧妙に使って、毎回成績優秀の不破椿を陥れようとしてたんだよ。ある意味、今回の中では1人だけ、一枚上手だったってことだな。』


『ほーら、言ったじゃん。私はなんにもしてないって。』


不破さんの勝ち誇った目に今回は何も思うことができない。悪くないと思うからだ。


『いい加減、出てきたらいいのにー。
頭いい子を演じて強がっておきながら、本当は学力悲惨に加えて心はグッチャグチャで、カンニングまでしちゃう、将来犯罪者有力候補の、長澤杏奈さん。逃げてばっかじゃダメだと思うよ〜?』


不破椿の挑発に乗るか乗らないか、これにかけるしかない。