その日、沙子は一人で喫茶「Garden」に来ていた。

昨日、直人とは別れた。申し訳なさそうに、でも幸せそうに、優宇と歩くところを見送った。


「ねぇマスター」

「なんだい」

「こうは考えられない?また2人は出会うために生まれ変わった、生まれ変わりを選んだのよ」



「だから思い出すし、こうやって出会うんだわ」


「でも私にはそんな記憶ないし、思い出せない。ただ大学で一緒の講義で、
隣の席の直人を好きになっただけなの」


一呼吸、おいて泣きそうな笑顔で言った。


「だから私、2人がしあわせだといいなって思っちゃったんだ。」

「だって、全く知らない同士だったのに、パズルのピースがはまるようにぴったりと似合っている。だから私が直人の恋人のピースにはなれなかったけど、友人のピースにはなれるかなって思うんだ」


「そう思うんだね」

「2人が笑ってくれると私も嬉しい。好きな人が好きな人と一緒になるって幸せだなって思うの。相手が私ではなくても、確実に好きな人は幸せでいるんだもの。相手の幸せを願うってロマンチックでしょ?それなら私も幸せだって思うの」


そういって、沙子は喫茶「Garden」を後にした。

彼女がここを訪れることはもうないだろう。