「ねぇ、きいてよマスター」

カランコロンとベルを鳴らしながら喫茶「Garden（ガーデン）」へ入ってきたのはマスター園原の母方のいとこである市本優宇（いちもと　ゆう）であった。

「きいて、きいて」
興奮した様子でカウンターに着くと、水を一杯キレイに飲み干した。
幸い、ほかに客はいない。

「で、何だい、今日は」
そう問いかける園原に、優宇は身を乗り出してせまった。

「見つけちゃった、私の恋人。前世で再会を誓った恋人よ」

「ふうん」

「え、ふうんじゃないでしょ、ビッグニュースじゃない。2人は戦乱の下で引き裂かれ、生まれ変わったら一緒になろうね、って固く約束したのよ」

「そうだったね、もうその話は聞き飽きたよ」


そう、それはさかのぼることこと一週間前。

優宇は友人に誘われて、「前世がわかる」といううたいのお店に出かけて行ったのだ。

そこで、優宇はある時代のお姫様であったこと、今日道端で通り過ぎたのが前世の恋人の戦士であることを思い出したのだ。


「もー、感動的なのにー」

『前世』の話を平然と聞きながら、注文は？と優宇に問うた。

「オレンジジュース！」

「はい、ワンオレンジね」

優宇の話を聞いても、園原はその話を聞き流しもしなければ動じもしない。

なぜならば、自身が前世の記憶を持って生まれてきているからだ。

そして、なぜかはわからないが、

この喫茶「Garden」にはいつしかそのような人が集まるようになっていた。