木の陰に隠れ、息を整える青年。
髪はやや長く、銀色をしており
目は赤くて頭には角が生えている。


鬼。


村人たちは、この青年を探しているようだ。


「……あー、しつこい奴らだな。」


切れた息を整えて、ようやく口を開く。
後を追っては来ていないようで周りは静かだった。

「そんなに鬼が嫌いか、人間め……」


悪さをしに来たわけじゃない。
ただ、散歩をしていただけなのに
姿を確認すると血相を変えて、武器を持って追いかけてくる。

鬼は、人を喰う。

勿論、全部の鬼がそういうわけじゃない。
彼も人を喰うことはしない、所謂優しい鬼であった。