「鬼だ」


「鬼が出たぞ」


時は夕暮れ。
半鐘(はんしょう)をガンガンと鳴らす村人。

この鐘は、火災や洪水の発生時などに鳴らして知らせるものであるが
この頃は鬼が人里に現れた時にも鳴らされていた。

音を聞いた女子供は家の中へ、
男は刀や弓、鍬(くわ)などを持って外へ出た。

「どこだ?!」

「探せ!探すんだ!」

村を出てすぐの森。
仕留めることはできなくても、遠くに追い払おうと村人たちは松明(たいまつ)を持ち
森の中に入っていった。