「まあ、そう言うことだから、僕が栞から離れるなんて有り得ないよ。たとえ栞がもうすぐ死んじゃうんだとしても、まだ3ヶ月あるんでしょ?」


私にとってはもう3ヶ月しかないと思ってたけど、悠真にとってはまだ3ヶ月なんだ。


「うん」


「じゃあそれまでたくさん一緒に過ごそう?父さんに頼んで、外出できるようにしてもらうから」


「いいのっ!?」


外出、その言葉を聞いた瞬間、私は悠真をキラキラした目で見ていたと思う。


だって、生まれてこのかたここの外なんてあまり行ったことがないから。


一時病状が安定した時期もあったけれど、またすぐに悪化しちゃって、病院に戻っていたし。


「うん。走ったりとかしないで、後あまり人の多いところに行かなきゃいいのかな?正確にはわからないけど、気をつければ大丈夫だと思うよ」


「やったぁ!悠真、ありがとう!」


「ううん。僕も栞と一緒に過ごしたいから」


悠真はそう言って、笑みを浮かべてはしゃぐ私に、落ち着け、と言うように抱き締めた。


いつもの私だったら恥ずかしがるところだけど、嬉しくてテンションの上がっていた私は無意識に悠真の背に腕を回していて、なにやら抱き合うような体制になっていた。


外に出れることも嬉しかったけど、何より嬉しかったのが、悠真が私から離れるなんて有り得ないと言ってくれたことだった。


余命のことを告げる前まで燻っていた、私の中にあった不安と恐怖という感情は、悠真の言葉で跡形もなく霧散したのだった。