「なぁ、少し疲れてるか?」



聴診すると、微かに聞こえる喘鳴と心音が不整に聞こえていた。



この不整脈…



心臓の移植をして、しばらくしてからの不整脈だった。



何回か、脈が飛んでいてそれが日に日に悪化しているようにも感じた。



疲労だといいんだけど。




遥香の表情や、日頃の様子を見ると疲労が蓄積されていっていることは、遥香の口から言われなくても分かる。



きっと、遥香にとって今は休憩が必要なのかもしれない。




だけど、試験が終わるまではそんなことも言えるわけがない。




「ねぇ…。」




どうしたら、遥香を楽にすることができるのか。




遥香が医者になるまで、この生活が続くのか。




遥香は本当に頑張っていることは分かる。




本気で、遥香が医者になりたいっていう気持ちがあることも分かる。




だけど…。




医者になるのを止めるべきか…。




しかし、俺にそんな権利があるわけがない。




それに、ここで止めてしまったら、今までの遥香の苦労が水の泡になってしまう。





そんなことしたら、遥香は後悔を背負っていかないといけなくなるよな。




「ねぇ、尊。


そんなに、悪い…?」




ずっと、遥香の胸に聴診器を当てていたことに気づいた。




「すまない。なぁ、遥香。」




「なに?」




「1人で抱え込むなよ。」




「うん。」




俯きながらそう答える遥香。




「ほら、顔を上げて。」



俯く遥香の顎をすくい上げ視線を合わせた。




「さっきも、言ったけど遥香のこと支えるからな。


だから、一緒に頑張ろう。」




「ありがとう。」




遥香を元気にすること



前を向けるようにサポートすること



遥香を支えていくこと



いつも俺の生活の中心には遥香がいて、遥香に支えてもらっている。



それはこれからもずっと変わらないし、この生活は手放したくない。



遥香の診察をすべて終わらせてから、遥香を抱き上げ車で一緒に家へ向かった。