ーside遥香ー


日に日に、自分の体調が悪くなっていることが自分でも分かるくらいに悪化していった。



喘息の呼吸困難で、何度も自分は死ぬんじゃないかとか思ってきた。



その恐怖で、押しつぶされそうになったことは何度もある。


だけど、対応ができれば多少のことで命には関わらない。



でも、心臓は別。



テレビやニュースで、心臓の疾患で亡くなったという情報を聞く度に、私は自分のことのように捉えていた。



いつまでも、こうしていられない。



「おはよう。」




私は、そんなことを考えながらリビングへ向かうと、尊が難しい顔をしていた。



「あ、遥香。おはよう。」




「尊、眉間にシワがよってる。」



私は、尊の眉間のシワを触った。



「遥香、お前ってやつは。」



尊の手が私の腰に伸びてきて、私は尊と向かい合う形で、尊の上に座った。




「遥香こそ、どうした?難しい顔して。」




「何もないよ。」



私も、尊の腰に腕を回した。



「今日は甘えん坊さんだな。」



意地悪な笑みを浮かべられた。



「そうだよ。悪い?」



私も、尊に負け時とそう言った。




「悪いわけないだろ。」




「尊…?」




「ん?」



「8時だけど、用意しなくていいの?」



尊が、家を出る時間をとっくに過ぎていた。



「大丈夫。今日は休みなんだ。」



「そうなんだ。」



尊は、私の頭を撫でてから再びパソコンに手を伸ばし、何かを打っていた。



片手は、私の腰にある。



片手で文字を打ってるのに、どうしてそんなに打つのが早いの?



思わず、そう言いたくなるくらいだった。



「遥香、お出かけするか?」



「え?」



私は、耳を疑った。



だって、今日は体調のことを考慮して休んでるんだよね?



「本気で言ってる?」



「あぁ。本当は、体調のことを考えて休んだ方がいいのかもしれないけど…これからしばらく入院してもらうことになるから。」




「え?」


どうして?



私、まだ大丈夫だよ?



尊の、言葉に私は涙をこぼしていた。