少し、教科書がカラフルになってきたけど、何も書いていない教科書よりかはいい。


それから、私は勉強をしていた。


「遥香ちゃん。あ、佐々木先生。これから、院長先生が遥香ちゃんの診察をしたいみたいなんですけど…大丈夫ですか?」



「あぁ。分かった。」




「もしかして、退院できるのかな?」



私は、尊に聞いてみた。




「本当、病院は嫌なんだな。」



笑いながら、頭をかく尊。



病院が、好きな人なんかいるわけないじゃん。



思わず、そうつっこみを入れたいくらいだった。


「遥香ちゃん。こんにちは。」




「こんにちは。」




「尊、ちょっと外に出ていてくれないか?」



「え?」



院長先生は、そう言ってからカーテンを閉めた。





「遥香ちゃん。ちょっと、傷口見せてもらっていいかな?」



院長先生に促され、私は服をめくった。





「よし。だいぶ治ってきたな。」



そう言ってから、カーテンを開けて、尊に部屋に戻るように言った。


「俺、外に出た意味あった?」



少し、尊が拗ねていた。



「拗ねんなって。安心しろ、遥香ちゃんには何もしてないから。それに、年頃の女の子なんだから、彼氏とはいえ、好きな人に見られるのはやっぱり抵抗あるだろ。」




「参ったな。」



この表情は、きっと自分も困っているというような顔だった。



理性をこらえることが、大変とか昔言ってたっけ。




「大丈夫ですよ、いつも診察されてるので。」



私は、院長先生にそう伝えた。




「そっか。それから、遥香ちゃん。明日1日様子を見て、大丈夫そうだったら退院しよう。」




「本当!?」




「あぁ。でも、いくつか条件がある。」




「条件?」




「1番に守ってほしいことは、体調が悪い事を必ず尊に伝えること。自分の身体を大切にすること。この2つのことは、遥香ちゃんの義理のお父さんとして。それから、医者としては、しばらくは、激しい運動をしないこと。人混みは避けること。それから…食事制限を守ってほしい。いいね?」




「はい。」




私は、最初の2つの約束が頭から離れなかった。




尊のお父さんは、家族として私の心配をしてくれている。



それが、たまらなく嬉しかった。




尊の彼女として、未来の妻として認められているみたいで嬉しかった。