彼女と出会ったのは僕が高校に入ったばかりの頃。


放課後の生物室でのことだった。



『君、私のことが見えるの?』


『…見えるけど、なに』


『ほ、ほんと…?
霞んだり、変になってたりしない?』


『あんた、何。まさか幽霊?』


『そうだよ、私は幽霊。
死んでるの』



何のためらいもなくそんなことを言う可奈子が可笑しくて、思わず笑ってしまったのを覚えている。


今思えば不謹慎だったのかもしれないけど、可奈子は何も言わず一緒に笑ってくれていた。



『ねえ、君の名前は?』


『よう。漢字で葉っぱの葉って書いてよう』


『私はかなこ。漢字はね、これ』



そう言って可奈子はポケットの中に入っていた小さなノートを見せてくれた。


その表紙には端っこに小さく【小松 可奈子】と書かれていた。