「悪い悪い。変な噂流れたらお前困るもんな」
「困る?」
平野課長まで、私との噂がマイナスになるって言いたいの?
ムッと眉を寄せて言うと、平野課長はオモチャを見つけた子供のようにニタッと笑った。
「こいつ、凄い可愛い婚約者がいんの」
「婚約者……?」
え……葉山、結婚するの?
「そうそう。いつの間に?って感じだよ。相手は専務の愛娘で秘書課の、」
「先輩」
「やべ。そろそろ本気で怒るからやめとくわ」
平野課長、ヤバイとか言いながら全く悪気なんてなさそうなんだけど。
それに今の葉山の声、私の知ってる葉山のままだったとしたら相当怒ってる感じだった。
だけど、平野課長は全く気にしてない。
それどころか可愛い後輩にちょっかい出して心底楽しんでるようだ。
「細井君はこっちね。じゃ、葉山宜しくな」
「はい」
うんざり顔の葉山に対して、クククッと笑いを堪える課長。
これはだいぶ気に入られてるみたいだけど、苦労してるんだろうな。
「悪いな」
「へ?」
「気悪くしたろ。あの人、お調子者だから」
「ちょっと空気読めなかったり?」
「はは。でも悪い人じゃないから」
あ、笑った。
外見は中学の頃とはだいぶ違うのに、笑顔は全然変わってなくて……
あれ?今の何?
胸がキュンってしなかった?
駄目駄目駄目。
葉山は結婚するんだし、葉山への想いは封印したんだから。
葉山はただの会社の先輩。
たったそれだけの関係。
もう一度自分に釘を刺して気を引き締める。
あれから九年。
私は前に進んだの。
過去の恋愛を引き摺らない。
仕事を頑張って、社内で素敵な彼氏とか作っちゃったりして、三十歳手前で結婚して。
泣いた分まで幸せになるんだから。
「困る?」
平野課長まで、私との噂がマイナスになるって言いたいの?
ムッと眉を寄せて言うと、平野課長はオモチャを見つけた子供のようにニタッと笑った。
「こいつ、凄い可愛い婚約者がいんの」
「婚約者……?」
え……葉山、結婚するの?
「そうそう。いつの間に?って感じだよ。相手は専務の愛娘で秘書課の、」
「先輩」
「やべ。そろそろ本気で怒るからやめとくわ」
平野課長、ヤバイとか言いながら全く悪気なんてなさそうなんだけど。
それに今の葉山の声、私の知ってる葉山のままだったとしたら相当怒ってる感じだった。
だけど、平野課長は全く気にしてない。
それどころか可愛い後輩にちょっかい出して心底楽しんでるようだ。
「細井君はこっちね。じゃ、葉山宜しくな」
「はい」
うんざり顔の葉山に対して、クククッと笑いを堪える課長。
これはだいぶ気に入られてるみたいだけど、苦労してるんだろうな。
「悪いな」
「へ?」
「気悪くしたろ。あの人、お調子者だから」
「ちょっと空気読めなかったり?」
「はは。でも悪い人じゃないから」
あ、笑った。
外見は中学の頃とはだいぶ違うのに、笑顔は全然変わってなくて……
あれ?今の何?
胸がキュンってしなかった?
駄目駄目駄目。
葉山は結婚するんだし、葉山への想いは封印したんだから。
葉山はただの会社の先輩。
たったそれだけの関係。
もう一度自分に釘を刺して気を引き締める。
あれから九年。
私は前に進んだの。
過去の恋愛を引き摺らない。
仕事を頑張って、社内で素敵な彼氏とか作っちゃったりして、三十歳手前で結婚して。
泣いた分まで幸せになるんだから。

