同じ事を繰り返す……

また手紙を抜き取られて、葉山に心配掛けて。
葉山から手紙が届かない不安、寂しさ、悲しさを味わうってこと……?


「嫌だ…そんなの……」

「なら犯人を突き止めるしかないの」

「わかった。私、やる」

「決行は今日の放課後、部活の後よ」


本当は犯人探しなんて気が進まない。

だってその人も葉山が好きなんだと思うから。

好きな人が違う女と文通なんてしてたら、私だって嫉妬する。

取られたくないって思うもん。

その想いが大きくなって憎しみに変わって。

きっと犯人も同じ。

ギリギリまで我慢してた。
でも自分が抑えきれなくなって、つい手を出してしまった。

そういうことだと思う。

その気持ち、私もわかるから。
犯人を探し当てて、もっともっと追い詰めるなんてしたくない。


でも、この先も手紙を抜き取られるのは見て見ぬ振りは出来ない。
話してやめてもらうしか方法はないんだ。


私は覚悟を決めてしっかりと頷いた。





放課後。

私と花梨は部活が終わると速攻で帰る支度を済ませて下駄箱に手紙を入れ、外の植木の影に身を潜めた。


手紙には犯人に見られてもマズくないような事を書いた。




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話があります
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都合のいい日と時間を教えて下さい
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これを見るのは葉山が先か、犯人が先か。

犯人と対峙する覚悟は決めたけど、やっぱりそんな事態にはならないで葉山にちゃんと手紙が渡ればそれが最良だと思う。


「来るかな、犯人」


花梨の声も心なしか不安そうに聞こえる。

私だって同じ。いや、私なんて余裕が無さすぎて声すら出ない。

不安と緊張で押し潰されそうだ。


早く……早く来て、葉山……


両手を握って祈るように呟いた。