花梨が呆れるのも無理はない。

ここまで運の悪さが続くと自分でも呆れて何も言えないもん。


「未遂に終わったなら仕方ない。またチャンスを作ればいいのよ」

「どうやって?」


学校の保健室で二人というシチュエーション。

葉山のいつもより甘い言葉の雨。

かき集めた私の勇気。


あんな最高な大チャンスを作るなんて出来るのかな。


「デートに誘うの」

「デート?」

「そう。映画を見るのも良し、遊園地に行くのも良し。何でもいいから二人で会って、そういう雰囲気にもってくのよ」

「でも私に出来るかな」

「出来るかなじゃなくてやるの。気持ち伝えるって決めたんでしょ?」


花梨の真っ直ぐな瞳が私の心に問い掛ける。

答えはイエス。
私はもう文通だけじゃ嫌なんだ。

葉山と直接話したい。
目を見て、顔を見て。

その手を繋いで歩きたいの。


「誘ってみる」


早速手紙を書いて渡そう。

思い立ったらすぐ行動。
手紙を急いで書くと、昼休み終了ギリギリで昇降口に向かう。

周りに人はいない。

胸の高鳴りを感じながら、私は確かに葉山の下駄箱に手紙を入れた。


今入れたら手紙に気付くのは多分、昼休みが終わった後。
球技大会の午後の部があるから、外に行く時に気付いてくれるはず。

早ければ放課後には返事が来るかもしれない。


早く返事が欲しい。
でも、どんな反応するかちょっとだけ不安もある。


午後の部は見学だけだったけど、上の空で全然応援に集中出来なかった。