「綾音軽すぎ。もっと食べた方がいいぞ」

「嘘……」


軽いわけがない。
葉山にお姫様抱っこされるってわかってたならダイエット頑張ったのに‼︎


「嘘じゃない。というか、俺はごめんなさいより別の言葉の方が嬉しいんだけど」


葉山の優しい声と笑顔に胸がキュンと締め付けられる。

ごめんなさい、じゃなくて別の言葉。

葉山らしいや。
私が少しも気にしないように言ってくれてるってわかる。


「ありがとう」


面と向かってお礼を言うのって照れる。

手紙だと相手の顔が見えないから返事が来るまではそわそわするけど、ここまで照れたり恥ずかしかったりはしない。


お礼にしても何にしても、直接目を見て伝える方が単純にはいかないことの方が多い。

でも、直接伝えるってとても素敵なことだと思う。

だって、私がありがとうって言ったあとの葉山の嬉しそうな顔がこんな近くで見られるんだから。


「それと、ごめんなさい」

「またごめん?」

「今朝のこと。それから、この間の昼休みも」

「昼休み?」

「私が何かしちゃったから怒ったんでしょ?」


葉山とギクシャクし始めた原因の昼休み。

正直、まだよくわからない。
なんで細井とのことでそこまで怒るのか。

考えても、出て来る答えは自分に都合がいいことばかりで。


「謝るのは俺の方。綾音は何もしてないよ」

「でも」

「俺が勝手にヤキモチ焼いただけだから」

「へ?」


ヤキモチ?葉山が?

それって…どういうこと?
私が考えてた通り、自分に都合がいいように解釈しちゃっていいの?


「ムカついたんだよ。細井が綾音のこと名前で呼んでたり、何かとちょっかい出したりすんの。俺以外の奴と仲良さそうにしてるのなんて見たくなかった」


気まずそうに視線を逸らす葉山。
その頬は赤く染まっている。


「私…細井のことは何とも思ってないよ?」

「でも向こうはそうは思ってない」

「まさかっ!細井だって私のこと男友達と同等にしか見てないって」


あれ?でも待って。

今朝の細井…
俺は特別仲が良いと思ってる、みたいなこと言ってた。

それにさっきも珍しく真面目な顔して応援来いよって……