「う、そ……」


私の声、届いた……?


目を丸く見開く葉山。
相当驚いてるみたいだ。


今朝あんな事があったから、私が来るとは思わなかったのかな…


ドキドキする。

ねぇ、葉山。
約束通り葉山だけを応援しに来たよ。

私、ここにいてもいい?


葉山にボールが渡る。
さっきまでの動きとは打って変わって試合に集中し始めた。


「やっぱり、葉山は綾音のことを待ってたんだね」

「そう思ってもいいのかな……」

「少しは自信持ちなさい」



輝く笑顔と煌めく瞳。
周りを惹きつけるオーラ。

葉山にだけスポットライトが当たってるかのように、目が葉山を追う。


もう葉山しか目に入らない。

葉山しか……


「綾音危ないっ‼︎」











外から楽しそうな声が聞こえる。


「ごめんなさい」


誰もいない保健室に葉山と二人。

この上なく心臓が早鐘を打ちまくる。


数分前、葉山しか見てなかった私はサッカーボールが飛んで来るのに全く気付かなかった。

葉山と花梨の『危ない』っていう声が聞こえた直後、見事に私の後頭部に直撃。

意識が飛びそうになるほどの激痛に半分泣きながら悶えていると、葉山が飛んできてくれた。


「綾音は悪くないんだから謝るなって」

「それはそうなんだけど……その、重かったでしょ?」


葉山は悶える私を有ろう事かお姫様抱っこして保健室まで運んでくれた。

女子の悲鳴やら男子の冷やかしの声が学校中に響くけど、私はそれどころじゃない。


何が起きてるの?って、頭がパニックだった。

強打して痛くてたまらないのと、葉山にお姫様抱っこされてるのと。

痛いけど恥ずかしい。
恥ずかしいけど嬉しい。
嬉しいけど痛い。


自分で歩けるからって言っても葉山は聞く耳を持ってくれなくて。

結局、保健室の椅子に座るまで葉山の腕の中で真っ赤になった顔を隠していた。