「返事書かなきゃ」


手紙の内容に沿って返事を書いていく。

初めての手紙の時もそうだったけど、好きな人に自分の字を見られるって結構恥ずかしい。

漢字を間違えてないか、字は読みにくくないか。

時間を掛けて丁寧な字になるように、ペンを走らせる。


「もう逃げたりしない………先輩って呼ぶの慣れてないから恥ずかしいね…っと」


それと好きなように呼んでいいって書いてあったけど……

いきなり大輝って呼び捨てにしたら怒る?


「ん〜…無理だな」


大輝って呼んでもいい?と一度は書いてみたけど、流石にこれは図々しいし恥ずかしいかも。

書き掛けの手紙をくしゃくしゃに丸めると、新しい紙に一から書き直した。


「呼び方考えておくね、っと」


もう少し葉山との距離が近付いたら名前で呼んでいいか聞いてみよう。

とりあえず今はまだこのまま葉山呼びでいい。


あとは、何を書こうかな。

これで終わりじゃ文通にならない。
だって返事しか書いてないもん。

会話を広げたり、文通を続けるために私からも質問とか新しいネタを書かなくちゃ。


そうだ。
もうすぐ中学生になって初めての行事、球技大会がある。

葉山は何の競技に参加するんだろう。

競技大会は男子サッカー、女子バレー、男女混合ドッヂボールがあって、私はドッヂボールになった。

男女混合は女子には人気がない。
そのため、球技系運動部に入ってる人が暗黙の了解で選出されることが多く、私も半分強引にドッヂボールにさせられてしまった。


葉山が出る競技がわかれば見に行ける。

学年関係なくトーナメントが組まれる球技大会。

他クラスを応援するのはご法度だけど、心の中で応援する分には大目に見てほしい。


「これでよし」


明日、これを下駄箱に入れるのが楽しみだ。
葉山がどんな顔で手紙を受け取るのか見て見たいとこだけど、それは我慢。


書き終えた手紙を綺麗に折って制服の胸ポケットに仕舞い、葉山から貰った記念すべき一通目は生徒手帳の中に忍ばせた。