手紙はすぐには見れなかった。

見るのが勿体無い気がするし、そもそも緊張して開くのに勇気がいるし。

見るなら部屋で一人ゆっくりと見たい。


だけど、見ないなら見ないで気になる。

部活中、ポケットに忍ばせた手紙を何回も触ってることに気付いて、生徒手帳の中に仕舞い直した。


「またブサイクになってる」


花梨は呆れながら言うと、私の頭をバシッと軽くどついた。


「ゔ……っ、ありがと…」


どつかれた頭を摩りながらお礼を言う。


軽くと言っても、何度も同じ所をどつかれてればそれなりに痛くもなるけど。

“部活中、ニヤけたら叩いてくれる?”

そう頼んだのは私だ。

お陰でどつかれる度に気を引き締めて、なんとかその日の部活を終えた。



「はあぁ〜…疲れた」


家に帰ると、制服から着替えずにベッドにダイブした。

大会が近いから練習がより一層ハードになってきて、最近は寝るのが早くなった。

今日も早く夕飯を食べてお風呂に入って寝たい。

だけどその前に、生徒手帳から手紙を取り出して、テーブルの上に置いた。


ドキドキする。

ほんの少し震える指先で、慎重に手紙を開いた。


葉山の字を見るのは何気に初めてかもしれない。

大きくて筆圧が濃く、角ばった字。
私の丸くて弱々しい字とは全く違う。


「特別……」


葉山はこれをどれぐらい時間を掛けて、どんな気待ちで書いてくれたんだろう。

少しは緊張してくれたかな。

書いてる時間は私だけのことを考えてくれてたって思ってもいい?

下駄箱に入れる時、どんな顔をして入れたの?

今は何を思ってる?


この手紙を通して、葉山を想う。


手紙って素敵。

ずっと残るものだし、字から相手の温かさや優しさを感じる。


字はその人の心を表し、手紙はその心を届ける。

最高のコミュニケーションだと思う。