数日後。

日直のため部活に遅れて行くことになった私は、この日を狙って書いた手紙を小さく折って手の中に忍ばせた。


はあぁ〜、落ち着かない。

こんなに緊張するのはいつ振りだろう。

心臓が苦しい。
ドキドキし過ぎて胸がはち切れそうだ。

誰かいないか必要以上に辺りを見渡し、何度も手の中の手紙を確認する。


「大丈夫…大丈夫……」


これを渡したら葉山にどう思われるかな。

考えただけで不安になる。

葉山への初めての手紙が謝罪の手紙っていうのも少し残念な気がするけど仕方ない。

とにかく誰かが来る前に入れなくちゃ……


手紙をどうやって渡そうか悩みに悩んだ結果、鞄に直接入れておくことに決めた。

日直の日なら部活に行ける時間が遅くなる。

その時間には、帰宅部の生徒はほとんど下校してるはずだし、部活の人は練習の真っ最中で荷物置き場にはほぼ誰もいないだろう。


うちの中学には部室がない。

そのため、鞄は各部活ごとに置く場所が決まっている。

バスケ部は校舎から体育館に繋がる渡り廊下の端に置いておくのが決まりだ。

その中で、葉山の定位置も確認済み。


「葉山の鞄は……あった!これだ」


緊張が最高潮に達する。

指先は震えるし少しの物音が気になって、なかなか決心がつかない。

告白じゃなく謝罪の手紙なんだから、サッサと入れちゃえばいいのに。

好きな人相手だと、何をするにも簡単に出来なくなってしまう。


恋って、人を臆病者にしてしまうのかも。


ふぅー、と息を吐いて心臓を落ち着かせる。

いざ!、と自分の中で意気込んだ時。


ガタガタッと割と近い所から音がして身体を強張らせた。