「告白はしないの?」

「……したいはしたいんですけど」


怖い。
今の状況で告白したって振られるのがオチだ。


だって今の私は全く意味がわからない後輩。

葉山葉山って付き纏ってたと思ったら、急に逃げるようになって。

葉山からしたら、何なんだよって苛ついてると思う。


もし、振られたら?
もう前の仲良しだった頃のようには戻れない。

そんなの想像しただけで泣けてくる。
葉山とこれ以上気まずくなるのは絶対に嫌だ。


「先生。どうして私、急に葉山と話せなくなっちゃったんでしょうか…」


小学校の時だって、葉山の姿を見たり話す時はそれなりにドキドキしてた。

でも、話せなくなるなんて事はなかったし、逃げたいとか会いたくないとか思うことなんて一度もなかった。

それどころか、もっといっぱい話したり遊んだりしたくて、葉山葉山って付き纏ってたぐらいだ。


「それは西條さんの葉山君に対する気持ちが子供から大人に成長している証じゃないかな」

「子供から大人に?」

「本当に本気の恋ってこと。ドキドキして頭が真っ白になるのも、胸が苦しくて逃げたくなるのも、想いを伝えるのが怖いって思うのも、それは全部その気持ちが本物だからよ」


本気の恋……

先生の言葉が妙に胸の奥に響いた。


今までの想いが本気じゃなかったっていう事じゃない。

小学生の時、それはそれで真剣だった。

けど、中学生になって心身ともに大人への階段を一段登った。そういう事だと思う。


「先生、私はどうしたらいいのかな」

「自分の気持ちに素直になって信じる事。隠れたり逃げたりしないで自信を持つ事。まだ何も始まってないでしょう?」


先生は綺麗な唇を上げて微笑む。

私を諭すように、真っ直ぐに私を見据えて。


そうだ。
私はまだ何も努力してない。

葉山に振られたわけでもないのに、何で隠れたりする必要があるの?


「花梨、先生。私頑張る」


校庭でバスケをする葉山を見つめる。

相変わらず楽しそうだ。

やっぱり心臓が苦しくなる。
それだけ葉山の事を好きになってるって事だ。


「私、このまま時が経つのを黙って見ていたくない」


花梨は笑った。
「やっと綾音らしくなった」と髪の毛を思いっきり乱されて、私はへへッと思いっきりピースして見せた。