その始まりは入学式の翌日、部活動見学の時だった。
バスケ部に入る気でいた私は、見学時間になるとすぐに体育館に向かった。
ミニバスとは全然違うレベルと活気にわくわくしながら、先輩達の練習する姿を食い入るように見ていた。
その中でも飛び抜けて上手いと思ったのは三年の渡部長。
身長は168センチある私よりも断然低い。
なのに、身長が高い選手と比べても全く引けを取らない。
高いジャンプでリバウンドを制し、低いドリブルで相手を翻弄し、正確なシュートで確実に得点を重ねていく。
部長のプレーを見ていると、久しぶりに心が踊った。
かつて私がミニバス見学の時に葉山のプレーを見て魅了されたみたいに。
早く先輩とバスケがしたい。
見学終了時、早速顧問に入部届を提出して体育館を出た。
一旦教室に戻り、鞄を持つ。
靴を履き替え校門に向かう途中、体育館のドアからボールが足下に転がってきた。
『綾音。悪い、取って』
『うん…』
葉山だ。
久しぶりに見る葉山のバスケ姿にドキッと胸が跳ねた。
ノースリーブの練習着から見える腕とカチカチに固そうなふくらはぎの筋肉。
首や額を流れる汗。
走った後の乱れた息遣いと声。
ア、アレ……?なんかおかしい。
葉山を直視出来ない。
葉山ってこんなにセクシーだったかな……
一度意識しちゃったから、もう気になって仕方がない。
目のやり場に困る。
『い、いくよ』
葉山から視線を外したまま、ボールを拾って葉山に投げる。
ミニバスよりも若干大きいボールは葉山の胸元に収まると、葉山は『サンキュ』と笑った。
『見学どうだった?』
『うん……楽しかったよ。もう入部届出した』
『そっか。明日から頑張れよ』
『…うん。頑張る』
やっぱり。私どうしちゃったんだろう。
上手く声が出てこない。言葉も続かない。
やけに緊張するし、ドキドキも半端ないし……
とにかく一杯一杯だ。
『綾音?どうかした?』
目を合わさない私を変に思ったのか、葉山は私に近付いてくる。
ダ、ダメダメダメダメ…っ‼︎
それ以上近付かないで!
今近くに来られたら、私本当におかしくなるっ……
『具合でも悪い?』
『大丈夫!何でもない!だから練習に戻って!ね⁉︎ね⁉︎』
私がいくら必死で言っても葉山は止まらない。
『顔赤いぞ?熱あるんじゃないか?』
そう言って、葉山は俯く私の顔を覗き込みながら額に手を当てた。
これ以上なく、ドキッと大きな音を立てた鼓動。
近いっ…近過ぎるよ!
目をギュッと瞑って見ないように意識しても、額に触れる葉山の大きな手の感触と温もり、葉山の呼吸に私の全神経が集中してしまう。
そして、私はとうとう限界に達してその場から走って逃げてしまったーー……
バスケ部に入る気でいた私は、見学時間になるとすぐに体育館に向かった。
ミニバスとは全然違うレベルと活気にわくわくしながら、先輩達の練習する姿を食い入るように見ていた。
その中でも飛び抜けて上手いと思ったのは三年の渡部長。
身長は168センチある私よりも断然低い。
なのに、身長が高い選手と比べても全く引けを取らない。
高いジャンプでリバウンドを制し、低いドリブルで相手を翻弄し、正確なシュートで確実に得点を重ねていく。
部長のプレーを見ていると、久しぶりに心が踊った。
かつて私がミニバス見学の時に葉山のプレーを見て魅了されたみたいに。
早く先輩とバスケがしたい。
見学終了時、早速顧問に入部届を提出して体育館を出た。
一旦教室に戻り、鞄を持つ。
靴を履き替え校門に向かう途中、体育館のドアからボールが足下に転がってきた。
『綾音。悪い、取って』
『うん…』
葉山だ。
久しぶりに見る葉山のバスケ姿にドキッと胸が跳ねた。
ノースリーブの練習着から見える腕とカチカチに固そうなふくらはぎの筋肉。
首や額を流れる汗。
走った後の乱れた息遣いと声。
ア、アレ……?なんかおかしい。
葉山を直視出来ない。
葉山ってこんなにセクシーだったかな……
一度意識しちゃったから、もう気になって仕方がない。
目のやり場に困る。
『い、いくよ』
葉山から視線を外したまま、ボールを拾って葉山に投げる。
ミニバスよりも若干大きいボールは葉山の胸元に収まると、葉山は『サンキュ』と笑った。
『見学どうだった?』
『うん……楽しかったよ。もう入部届出した』
『そっか。明日から頑張れよ』
『…うん。頑張る』
やっぱり。私どうしちゃったんだろう。
上手く声が出てこない。言葉も続かない。
やけに緊張するし、ドキドキも半端ないし……
とにかく一杯一杯だ。
『綾音?どうかした?』
目を合わさない私を変に思ったのか、葉山は私に近付いてくる。
ダ、ダメダメダメダメ…っ‼︎
それ以上近付かないで!
今近くに来られたら、私本当におかしくなるっ……
『具合でも悪い?』
『大丈夫!何でもない!だから練習に戻って!ね⁉︎ね⁉︎』
私がいくら必死で言っても葉山は止まらない。
『顔赤いぞ?熱あるんじゃないか?』
そう言って、葉山は俯く私の顔を覗き込みながら額に手を当てた。
これ以上なく、ドキッと大きな音を立てた鼓動。
近いっ…近過ぎるよ!
目をギュッと瞑って見ないように意識しても、額に触れる葉山の大きな手の感触と温もり、葉山の呼吸に私の全神経が集中してしまう。
そして、私はとうとう限界に達してその場から走って逃げてしまったーー……

