生演奏の結婚行進曲が鳴り響く。


ついにこの時が来た。

葉山と付き合い始めてから六年。
私達は今日、結婚する。


「では、お時間です」


インカムを付けたスタッフが言うと、ふぅと息を吐いた。

緊張し過ぎて貧血を起こしそうだ。


でも、私にはこれがあるから大丈夫。
付き合い始めた日に貰った、葉山の気持ちが詰まったたった二言の手紙。

貰った日から今日まで肌身離さず持ってた。
もちろん今日も介添人の方にお願いして、ドレスの中に忍ばせてある。

この手紙は私の宝物。
これがあれば何だって頑張れる。
いつでも葉山が側にいて守ってくれてるような気がするんだ。



一斉に大きい白いドアが開くと、飛び込んで来た光に思わず目を細めた。

大理石のバージンロードに白い太陽の日差しが当たり宝石のように眩しい。


オルガンの綺麗な音と沢山の拍手の中、腕を組んだお父さんと一歩前に進み、ゆっくりとお辞儀をする。

心臓は人生最高と言えるほど、激しく鼓動を繰り返している。


顔を上げると、私が大好きな人達の心からの笑顔があった。

家族や親戚、大好きな友達、お世話になってる職場の上司や後輩。

そして、バージンロードの先に立つ最愛の人、葉山大輝。


色んな記憶が走馬灯のように駆け巡る。

まだ始まったばかりなのに、目頭が一気に熱くなった。


「行くぞ」


お父さんに引かれるようにバージンロードをゆっくりと進む。


新郎側の席に座る平野課長と倉本さん。
二人は去年結婚した。
倉本さんは寿退社し、今はお腹の中に新しい命が宿っている。

秘書課の斎藤さんは相変わらず格好良い。
つい最近知ったのは、実はシングルマザーで小学生の息子がいるということ。


視線を前に戻すと、すでに涙を流した花梨と細井の姿が見えた。

滅多に泣かない花梨の涙を見たのはこれで三回目。

その涙を拭くのが、細井だ。
まさか二人がくっつくなんて思いもしなかったけど、案外お似合いな二人。

それにしても。
あ〜あ、綺麗な顔が台無し。
くしゃっと顔を歪めて泣く花梨。

私の全ての思い出に花梨がいる。
悲しかったこと、寂しかったこと、楽しかったこと、幸せだったこと。

花梨がいたから私の青春時代は色付いた。


「ありがとう、花梨。大好き!」


震える唇で涙を堪えながら言った言葉はちゃんと届いたようで、花梨は何度も頷いた。