未来郵便 〜15年越しのラブレター〜

「お願いだから……私の中から、いなくなってよ……楽になりたいっ…」


しんと静まり返った踊り場に、私の涙声が響く。

ややな沈黙が流れ、それを破ったのは葉山の切なげな声だった。


「悪いけど、いなくなってやらない。楽にもさせてやれない」

「っっ…」

「素敵な人見つけたんじゃんって言ったよな。その通り。俺の中にはもうだいぶ前から心に決めた人がいる」

「知ってる……だから、」

「綾音だよ」


葉山は私の言葉を遮り、強く揺るぎない声で言った。


「はっ……何、言ってんの……?」


葉山が心に決めてる人は倉本さんでしょう?

またからかってるの?
私の反応見て楽しんでる?


葉山を見上げる。

葉山は至って真剣な表情だ。

私だけを真っ直ぐ見つめて一段、また一段とゆっくり降りてくる。


「俺の中にいるのは昔からお前だけだ」

「嘘……」


じゃあ倉本さんは?

私はまた自分に良いように解釈しようとしてるの?


「嘘じゃない」

「結婚は?」

「するよ。でも、倉本さんじゃない」

「じゃあ誰…?」


早鐘を打つ心臓。


ゆっくりと近付く私達の距離。

体だけじゃなく、心も。
一番幸せだった、文通してたあの頃よりも近く。


「昔から心に決めた人がいるって言ったろ」

「それじゃわかんないよ」


胸が苦しい……
体が、心が、私の全てが震えてる。

葉山を求めてる。


「俺は綾音とずっと一緒にいたい」


私の目の前で足を止めた葉山がふわりと愛おしげに笑った。


「綾音が好きだ」


夢を見てるのかな……


葉山が、私を好きだって言った……