階段を駆け下りる。
思い出さないようにしても勝手に思い浮かぶ二人の笑顔と、薬指で光る婚約指輪。
お似合いだった。
二人が並ぶと眩しくて、目を逸らしたくなった。
なにが葉山への想いは封印したよ……
なにがこのドキドキは恋じゃないよ……
私、全然忘れられてない。
前に進めてないじゃん……
葉山の笑った顔見てドキドキしたり、婚約者見てショックを受けたり。
こんなの…恋じゃなくてなんだっていうの……
私は…私は……
まだ葉山のことが、好きなんだ。
涙が頬を滑り落ちる。
次から次へと、それは止まることを知らない。
「綾音⁈」
前を見ずに只管階段を駆け下りていると、突然腕を掴まれて足を止めた。
「っっ!…ほそ、い……?」
掴んだのは細井だ。
私の顔を見るなり目をみるみる大きく見開いて、困惑した声を漏らした。
「どうした?何かあった?」
「何も…ない……」
泣きながら階段を駆け下りてくる女に何もなかったなんて、誰が信じるだろうか。
何か悲しいことがないとこんな風に涙なんて流れないし、逃げるように階段を駆け降りてくることもない。
ましてや相手は古い付き合いの細井。
私のことをほぼ知り尽くしてる彼に通用するはずがない。
案の定、細井は眉を寄せた。
「じゃあ何で泣いてる?何処行こうとしてる?」
「泣いてないよ?今一課に戻るとこ」
「戻るとこって、ここ何階だと思ってんだよ」
何階って……
踊り場の階数表示に目をやる。
「あっ……」
私、十四階まで降りてきちゃってたんだ。
全然気付かなかった。
上から降りてきたのに一課に戻るとこなんて、馬鹿もいいところだよ……
「あー……昨日、夜更かしして映画見ちゃったからさ。ぼーっとしてたよ。今日はずっと欠伸出っ放しでマスカラ落ちちゃって大変」
怪しく思われないように、なるべくカラッと笑う。
「さ、戻ろ」と、くるっと背を向けて階段を上ろうとした時、再び手首を掴まれた。
思い出さないようにしても勝手に思い浮かぶ二人の笑顔と、薬指で光る婚約指輪。
お似合いだった。
二人が並ぶと眩しくて、目を逸らしたくなった。
なにが葉山への想いは封印したよ……
なにがこのドキドキは恋じゃないよ……
私、全然忘れられてない。
前に進めてないじゃん……
葉山の笑った顔見てドキドキしたり、婚約者見てショックを受けたり。
こんなの…恋じゃなくてなんだっていうの……
私は…私は……
まだ葉山のことが、好きなんだ。
涙が頬を滑り落ちる。
次から次へと、それは止まることを知らない。
「綾音⁈」
前を見ずに只管階段を駆け下りていると、突然腕を掴まれて足を止めた。
「っっ!…ほそ、い……?」
掴んだのは細井だ。
私の顔を見るなり目をみるみる大きく見開いて、困惑した声を漏らした。
「どうした?何かあった?」
「何も…ない……」
泣きながら階段を駆け下りてくる女に何もなかったなんて、誰が信じるだろうか。
何か悲しいことがないとこんな風に涙なんて流れないし、逃げるように階段を駆け降りてくることもない。
ましてや相手は古い付き合いの細井。
私のことをほぼ知り尽くしてる彼に通用するはずがない。
案の定、細井は眉を寄せた。
「じゃあ何で泣いてる?何処行こうとしてる?」
「泣いてないよ?今一課に戻るとこ」
「戻るとこって、ここ何階だと思ってんだよ」
何階って……
踊り場の階数表示に目をやる。
「あっ……」
私、十四階まで降りてきちゃってたんだ。
全然気付かなかった。
上から降りてきたのに一課に戻るとこなんて、馬鹿もいいところだよ……
「あー……昨日、夜更かしして映画見ちゃったからさ。ぼーっとしてたよ。今日はずっと欠伸出っ放しでマスカラ落ちちゃって大変」
怪しく思われないように、なるべくカラッと笑う。
「さ、戻ろ」と、くるっと背を向けて階段を上ろうとした時、再び手首を掴まれた。

