未来郵便 〜15年越しのラブレター〜

階段を駆け下りる。

思い出さないようにしても勝手に思い浮かぶ二人の笑顔と、薬指で光る婚約指輪。

お似合いだった。
二人が並ぶと眩しくて、目を逸らしたくなった。


なにが葉山への想いは封印したよ……

なにがこのドキドキは恋じゃないよ……


私、全然忘れられてない。
前に進めてないじゃん……

葉山の笑った顔見てドキドキしたり、婚約者見てショックを受けたり。

こんなの…恋じゃなくてなんだっていうの……


私は…私は……


まだ葉山のことが、好きなんだ。



涙が頬を滑り落ちる。

次から次へと、それは止まることを知らない。



「綾音⁈」


前を見ずに只管階段を駆け下りていると、突然腕を掴まれて足を止めた。


「っっ!…ほそ、い……?」


掴んだのは細井だ。
私の顔を見るなり目をみるみる大きく見開いて、困惑した声を漏らした。


「どうした?何かあった?」

「何も…ない……」


泣きながら階段を駆け下りてくる女に何もなかったなんて、誰が信じるだろうか。

何か悲しいことがないとこんな風に涙なんて流れないし、逃げるように階段を駆け降りてくることもない。

ましてや相手は古い付き合いの細井。
私のことをほぼ知り尽くしてる彼に通用するはずがない。

案の定、細井は眉を寄せた。


「じゃあ何で泣いてる?何処行こうとしてる?」

「泣いてないよ?今一課に戻るとこ」

「戻るとこって、ここ何階だと思ってんだよ」


何階って……

踊り場の階数表示に目をやる。


「あっ……」


私、十四階まで降りてきちゃってたんだ。

全然気付かなかった。
上から降りてきたのに一課に戻るとこなんて、馬鹿もいいところだよ……


「あー……昨日、夜更かしして映画見ちゃったからさ。ぼーっとしてたよ。今日はずっと欠伸出っ放しでマスカラ落ちちゃって大変」


怪しく思われないように、なるべくカラッと笑う。

「さ、戻ろ」と、くるっと背を向けて階段を上ろうとした時、再び手首を掴まれた。