なりたがり



 ふと背後から聞こえてきた声に、振り返って口元を緩める。
 姿を見なくても分かるその声の主は、わたしの大事な人だ。


「日和さんっ!」


 其処には真っ白なシャツを上手に着こなした、細身の少年が立っていた。

 色白の肌に良く似合う優雅な微笑を浮かべて此方に近付いて来る。


「相変わらずだね、雅(みやび)は」


 そうして彼――若狭日和(わかさ ひより)はわたしの名前を優しく呼ぶのだ。雅、と。
 自分の名前に大した思い入れは無かったが、その一文字一文字を大事にしてくれているような響きが好きだ。


「日和さん!こんなトコで何してんの!」

「ん?ああ、甘い物が食べたくなって」


 言いながら、日和さんは手にぶら下げていたコンビニ袋を持ち上げる。

 偶然鉢合わせる事など滅多に無いから、気分が突然引っ張り上げられた気分になった。学校で彼等を見る生徒達よろしく、つい興奮して駆け寄ってしまう。
 きっと彼等もこのような気持ちなのだろう。
 だからこそ、わたしはミキ程嫌悪を露わにする事が出来ないでいるのだ。

 気持ちが少なからず分かってしまうから。