なりたがり



 おっと、と慌てて口元を引き締める。
 ジョーさんと優しいという単語があまりにもミスマッチ過ぎて、危うく吹き出すところだった。無意識とは恐ろしい。


「って……あ、ジョーのお友達?」


 そこで漸くわたしの存在に気が付いたのか、結城さんの視線が此方に向けられて、綺麗に澄んだ瞳が興味深げに瞬いた。


「いえ、全然違――」

「そうそう、オトモダチー」


 即座に否定しようとしたわたしの言葉を遮って、ジョーは真っ赤な嘘を吐き出す。あからさまな誤魔化しにも関わらず、「そうなの!?」――興奮した声音を引っ提げて、階段を駆け下りてくる結城さん。
 人の言葉を疑うという事を知らないらしい。


「ジョーって女友達居たんだ!」

「うん、まあねー」

「いっつも女の子とデートとか言ってるけど、ちゃんと友達にもなれるんだね!」

「そりゃーなれますよー。ジョー様ですものー」


 これはもう故意的に虐められていますとはとてもではないけれど言い出せなくなって、仕方が無いので口を挟む事は諦めた。兎にも角にも面倒臭いのが一番嫌だ。