彼はわたしを“杉崎チャン”と呼ぶらしい。
初めての呼び方に若干の困惑を感じながらも、笑顔を取り繕って振り向いた。
其処に佇むのはすらりと伸びたシルエット。
「まーさか、また探しに来るなんてねー?」
わたしが此処に居る理由はすぐに分かったのだろう。可笑しそうにしなやかな猫目を細めて、それから視線を僅かにずらすと「しかも実際見付けてるし」と肩を揺らす。
それに対して昨日程苛立ちが湧かなかったのは、わたしの手の中に収まっている物を取り戻したからに違いない。
まるで精神安定剤だ。
「コッチこそまさか、ですよ。態々此処に何しに来たんですか?」
「んー?此処、元々俺のサボり場なんだよねー」
「……そうですか」
もしわたしを探しに来たというのならどれだけ暇人なのかと思ってしまった。
そもそもこれだけの有名人がわたしに執着する意味が分からない。玩具であればもっと遊び甲斐のある人間がその他大勢居るだろうに。
わたしのように無反応な人間程、扱い難い存在は無い。やる側の気持ちを考えたらそう思えるのだが。

