結果から言うと、筆箱を諦める事は出来なかった。
この件に関しては一晩寝かせたが、時間を置くごとに不安は大きく口を開けてわたしを呑み込んでしまうようで。あるかもしれないし、無いかもしれない。
後者の可能性の方が高いのかもしれないけれど、わたしにとって“それ”はそれ程大事な物だった。
何をされても何も感じなかった。
教科書を引き裂かれても。
無視をされても。
足を引っ掛けられて無様に転んでも。
誰かの嗤い声が聞こえても。
痛くなど無かった。
そもそも他人というものを信用していないわたしにとって、その他人に何をされようが知った事でなかった。
(……でもこれはあんまりだ)
頭の中でちらついた映像に唇を噛み締め、焼却炉に手を突っ込む。
其処には昨日放り込んだ教科書達がまだ息を潜めていて、僅かにほっと息を吐いた。
まだ燃やされていない。
中に散らばった教科書を雑に掻き集め外に放り出す。考えてみれば昨日此処を探索していた間も、ジョーさんに絡まれていて――それも、教科書は下にばら撒かれていたという油断も相俟って、この中自体は探していない。
無ければ無いでそれでいいのだ。
ただ見てみるだけ、そういう気持ちだった。

