なりたがり



 どうせ中は空っぽなのだ。これ以上の被害は無い。
 ズタボロに引き裂かれた教科書達に、行方知れずの筆記用具。ミキのように学校を休むという選択肢があればいいのだが、愛梨さんと日和さんの手前そうもいかない。
 心優しい彼等に必要以上の心配を掛けたくないのだ。

 ただでさえ、愛梨さんは本当の親のように良くしてくれているのだから。


「……何かあった?」


 暫くわたしの横顔を見ていた日和さんは、隣に腰掛けながら優しく訊ねてくる。
 その台詞とは裏腹に、口調は既に何かあったと確信しているようだった。

 日和さんには隠し事など出来やしない。


「―――失くしちゃって」

「失くした?」

「……筆箱。学校で使ってた」


 教科書はまた新しく買えばいい。
 授業で使う消しゴムやペンも違うのを買えばいい。

 その言葉だけで意味が分かったのだろう――一瞬押し黙った日和さんは、すぐに驚く程の優しい手付きでわたしの頬を撫でた。
 しかし何も言わないところを見ると、言葉が見付からなかったのかもしれない。