なりたがり



 お姫様――それは、彼等の中に咲く一輪の花。
 ミキはそれを気障な名前だ、何処ぞの小説か、と鼻で嗤っていたが、実際のところお姫様というのは途轍も無い権力の持ち主だ。

 ジョーさんの友人でありあの重役出勤メンバーの一員でもある男の彼女は、その肩書きを持つだけでどうやら同じだけの発言権を得るらしい。
 そもそもわたしには何の関係も無い話なので興味も無いが。




 結局、体育館裏にはやはり何も落ちていなかった。

 そもそも誰かが持ち帰って、何処かで捨ててしまったという事は無いだろうか。そうだとするならば、もう戻ってこない。
 そう思ったら何だか急に心細さを覚えて、足が止まる。


「お?遂に諦めるのかなー?」


 揶揄するような響きを持って放たれた声に、頭の奥に閃光が走った。


「―――え……く、さい」


 小さく呟いたそれが聞こえなかったのか、「んー?」と間延びした声で訊き返してくるジョーさん。