「ヒナタ、お前に恩返しをしたい」
「...へ?」
4月3日、僕が入江田高校の二年生になって2日が経った日の朝、茶碗一杯によそった朝飯のご飯を口にかきこみながら、カイトは言った。
「恩返しって?僕そんな恩を売るようなことしてないよ」
「バカ言え。力の多くを失ったとはいえ神の俺を拾ってくれて、おまけに居候までさせてもらってる。その恩を返したいんだ」
「ありがとう。でも、気持ちだけで嬉しいよ」
そう言いながら、食器を片付ける僕。
カイトは一応神ではあるが、とある理由でその能力のほとんどを失った。
地上世界のことを何も知らない今のカイトにできることは、留守番くらいだ。
「じゃあ、僕学校行ってくるから、食べたら食器片付けておいて」
「分かった。行ってこいよ」
僕が学校に行ってる間、カイトは家でひたすらゲームをして遊んでいる。
この家に来た時に教えたら、すぐにのめり込んだ。
「おはよう、日向」
「おはよう、奈津」
玄関を出ると、隣に住む僕の幼馴染、高嶺 奈津が待っていた。
奈津は、学校でもかなりの人気を誇る美少女で、腰まである長い茶色の髪とやたら整った顔立ち。
そして、中学に入ってから急激に成長した豊満な胸。
彼女の名前の通り高嶺の花すぎるが、実は僕が小さい頃から想いを寄せる相手だったりする。
去年、今年と奇跡的に同じクラスだったのだが、未だに想いを打ち明けることができずにいた。
「ん?どうしたの?」
「い、いや何でもない」
危ない...
つい見惚れてしまった...
「ふうん、変な日向」
笑いながら奈津はそう言った。
ちくしょう、可愛いなぁ。
「あ、そういえば担任の小坂先生ね、結婚するらしいわよ」
「へー、そうなんだ」
こんな感じで僕と奈津は毎日たわいのない会話をしながら登校するのが日課になっている。
いいんだ、僕にはどうせ高嶺の花。
奈津にはそのうちいい人ができるに決まってる。
僕にとってはこんな風に会話をするだけで幸せなんだ。
「やっほー、なっちゃん!」
「きゃっ」
学校の正門前で奈津に後ろから抱きついたのは向日葵の親友、宇都 鈴音。
鈴音は黒髪のショートヘアで、ツリ目の運動部系の女子だ。
胸はそこまで大きくなく、本人も気にしている。
鈴音は奈津が高校に入ってから知り合い、すぐに意気投合したらしい。
「ちょっと日向、あんたなっちゃんにまたなんかしなかったでしょうね」
「してねえよ!てか『また』って、僕は常習犯か!」
「ちょっとスズ、日向にそんなことする度胸ないって」
そんないつもと同じような会話をしながら、僕たち3人のクラスである2-Cの教室に向かった。
教室に入ると、奈津と僕は完全に切り離される。
奈津と鈴音は仲のいい女子の輪の中に入り、仲よさげに喋ったりしている。
一方僕は、席に着くと誰もよってはこないし、自分から話に行くこともない。
そう、僕はこのクラスではいわゆる「冴えないやつ」なのだ。
「はぁ...」
深いため息をつくと、俺の前に座る男子生徒が振り返った。
「なにため息なんてついてるんだよ、日向」
「うるさいよ、輝一郎(きいちろう)」
冴えない僕でも、一応友達はいる。
こいつはそんな中でも一番仲がいいと思われる、竹内 輝一郎。
坊主頭の柔道部で、明るい性格から誰とでも仲良くなれるコミュ力のあるやつだ。
「ため息なんてついてないで聞いてくれよ」
「何だよ」
「今日、このクラスに転校生が来るらしいぜ」
「転校生?」
「ああ、今朝職員室で話してるのをクラスの連中が聞いてきたらしくてな」
「...女子か?」
「残念、男子らしいぜ」
「そうか」
「そう露骨に残念そうな顔するなよ。ただ、ものすげえイケメンらしいぜ」
「イケメン?」
「そうだよ。だからみんな噂してるぜ。その転校生に我らが天使、なっちゃんが取られちまうんじゃねえかってな」
「そいつは大変だな」
僕は軽い口調で輝一郎をあしらうようそう言った。
なぜなら奈津がそのイケメンに取られようが僕には関係ないからだ。
僕のような人間よりも、そっちの方がずっとお似合いに思えてくる。
そう、僕なんかよりもずっと。
しばらく輝一郎と転校生の話をしていると、教室の扉が開き、担任の小坂先生が入ってきた。
小坂先生は日本史の若い女の先生で、結構美人なのでファンも多く(奈津の話だと、結婚するらしいが)補習を受けるためにわざと赤点を取ろうとする生徒もいるらしい。
担任になると聞いてはしゃいでいた人たちも、クラスに何人かいる。
「はい、席について。あなたたちのことだから多分もう耳に入ってるわね。今日から転校生がこのクラスであなたたちと一緒に生活します。さあ、入って」
小坂先生がそう言うと、教室の扉から、男子生徒が入ってきた。
短くもなく、長くもない白髪。
高すぎない身長。
結構きつめの目つき。
紛れもなく、アニメにでも出てきそうなイケメンだった。
イケメンなのだが、俺はその顔に見覚えがある。
「さあ、自己紹介して」
小坂先生から白のチョークを受け取る男子生徒。
そして黒板に名前を書き入れていく。
そこに書かれた名前は、
「神野カイトです。よろしくお願いします」
ちょっと待て...
な...なんでカイトがここに...?
「...へ?」
4月3日、僕が入江田高校の二年生になって2日が経った日の朝、茶碗一杯によそった朝飯のご飯を口にかきこみながら、カイトは言った。
「恩返しって?僕そんな恩を売るようなことしてないよ」
「バカ言え。力の多くを失ったとはいえ神の俺を拾ってくれて、おまけに居候までさせてもらってる。その恩を返したいんだ」
「ありがとう。でも、気持ちだけで嬉しいよ」
そう言いながら、食器を片付ける僕。
カイトは一応神ではあるが、とある理由でその能力のほとんどを失った。
地上世界のことを何も知らない今のカイトにできることは、留守番くらいだ。
「じゃあ、僕学校行ってくるから、食べたら食器片付けておいて」
「分かった。行ってこいよ」
僕が学校に行ってる間、カイトは家でひたすらゲームをして遊んでいる。
この家に来た時に教えたら、すぐにのめり込んだ。
「おはよう、日向」
「おはよう、奈津」
玄関を出ると、隣に住む僕の幼馴染、高嶺 奈津が待っていた。
奈津は、学校でもかなりの人気を誇る美少女で、腰まである長い茶色の髪とやたら整った顔立ち。
そして、中学に入ってから急激に成長した豊満な胸。
彼女の名前の通り高嶺の花すぎるが、実は僕が小さい頃から想いを寄せる相手だったりする。
去年、今年と奇跡的に同じクラスだったのだが、未だに想いを打ち明けることができずにいた。
「ん?どうしたの?」
「い、いや何でもない」
危ない...
つい見惚れてしまった...
「ふうん、変な日向」
笑いながら奈津はそう言った。
ちくしょう、可愛いなぁ。
「あ、そういえば担任の小坂先生ね、結婚するらしいわよ」
「へー、そうなんだ」
こんな感じで僕と奈津は毎日たわいのない会話をしながら登校するのが日課になっている。
いいんだ、僕にはどうせ高嶺の花。
奈津にはそのうちいい人ができるに決まってる。
僕にとってはこんな風に会話をするだけで幸せなんだ。
「やっほー、なっちゃん!」
「きゃっ」
学校の正門前で奈津に後ろから抱きついたのは向日葵の親友、宇都 鈴音。
鈴音は黒髪のショートヘアで、ツリ目の運動部系の女子だ。
胸はそこまで大きくなく、本人も気にしている。
鈴音は奈津が高校に入ってから知り合い、すぐに意気投合したらしい。
「ちょっと日向、あんたなっちゃんにまたなんかしなかったでしょうね」
「してねえよ!てか『また』って、僕は常習犯か!」
「ちょっとスズ、日向にそんなことする度胸ないって」
そんないつもと同じような会話をしながら、僕たち3人のクラスである2-Cの教室に向かった。
教室に入ると、奈津と僕は完全に切り離される。
奈津と鈴音は仲のいい女子の輪の中に入り、仲よさげに喋ったりしている。
一方僕は、席に着くと誰もよってはこないし、自分から話に行くこともない。
そう、僕はこのクラスではいわゆる「冴えないやつ」なのだ。
「はぁ...」
深いため息をつくと、俺の前に座る男子生徒が振り返った。
「なにため息なんてついてるんだよ、日向」
「うるさいよ、輝一郎(きいちろう)」
冴えない僕でも、一応友達はいる。
こいつはそんな中でも一番仲がいいと思われる、竹内 輝一郎。
坊主頭の柔道部で、明るい性格から誰とでも仲良くなれるコミュ力のあるやつだ。
「ため息なんてついてないで聞いてくれよ」
「何だよ」
「今日、このクラスに転校生が来るらしいぜ」
「転校生?」
「ああ、今朝職員室で話してるのをクラスの連中が聞いてきたらしくてな」
「...女子か?」
「残念、男子らしいぜ」
「そうか」
「そう露骨に残念そうな顔するなよ。ただ、ものすげえイケメンらしいぜ」
「イケメン?」
「そうだよ。だからみんな噂してるぜ。その転校生に我らが天使、なっちゃんが取られちまうんじゃねえかってな」
「そいつは大変だな」
僕は軽い口調で輝一郎をあしらうようそう言った。
なぜなら奈津がそのイケメンに取られようが僕には関係ないからだ。
僕のような人間よりも、そっちの方がずっとお似合いに思えてくる。
そう、僕なんかよりもずっと。
しばらく輝一郎と転校生の話をしていると、教室の扉が開き、担任の小坂先生が入ってきた。
小坂先生は日本史の若い女の先生で、結構美人なのでファンも多く(奈津の話だと、結婚するらしいが)補習を受けるためにわざと赤点を取ろうとする生徒もいるらしい。
担任になると聞いてはしゃいでいた人たちも、クラスに何人かいる。
「はい、席について。あなたたちのことだから多分もう耳に入ってるわね。今日から転校生がこのクラスであなたたちと一緒に生活します。さあ、入って」
小坂先生がそう言うと、教室の扉から、男子生徒が入ってきた。
短くもなく、長くもない白髪。
高すぎない身長。
結構きつめの目つき。
紛れもなく、アニメにでも出てきそうなイケメンだった。
イケメンなのだが、俺はその顔に見覚えがある。
「さあ、自己紹介して」
小坂先生から白のチョークを受け取る男子生徒。
そして黒板に名前を書き入れていく。
そこに書かれた名前は、
「神野カイトです。よろしくお願いします」
ちょっと待て...
な...なんでカイトがここに...?