顔をふせて、ふたりの横を通りすぎようとした。なぜか負け犬のように、とても惨めな気持ちだ。
でも、竜憧くんの腕が、うつむく私の肩を掴む。
「え、待ってよ!せっかく来てくれたんだから寄ってって」
「……はッ!?」
彼女が目の前にいるこの状況でそんなこと言われてもムリ!
断ろうとしたら、さらに驚いたことに彼女までも私をひき止めた。
「そうです。ぜひ寄っていってください」
「…………(ハイ?)」
冗談でしょう?3人で?そんな気まずい空気、私耐えられないよ。
なぜだろう、竜憧くんが"彼女"といるところなんか、一秒も見ていたくない。
ふたりを見ていると心が痛くなる。
「でもッ」
「私、今日は帰りますから。ぜひ兄のことお願いします」
「………………へ?」
自分の口から変な空気が漏れた。
「…………(兄?)」

