こんなに緊張するのはあれ以来だ。
小六のとき、まぐれで市のコンクールに入賞した作文を、全校生徒の前で読みあげたとき…………。
いや。今そんな気恥ずかしい想い出はどうでもいい。
それよりやたら通行人(主に女)の視線が気になる。
二度見、チラ見、ガン見。
微妙に違えど、みんなさっきの女子高生と同じ、甘酸っぱい系の視線で彼をみつめる。
学校、または職場に着いたら彼女たちはこう言うんだろう…………
『ちょっと聞いてー!今朝さ、すっごいイケメンとすれ違ったのぉー!』
『えーまじ?』
『でも隣になーんかビミョーな顔の女連れててさぁー』
『えーやだー(笑)』
みたいな?
うるせーよ!ビミョーで悪かったな!
「千歳。ゆうべ何時ごろ寝た?」
内心密かな妄想と戦っていると、おもむろに話しかけられた。
「え?ゆうべ?……えっとね、12時ころかな」
「へぇ、けっこう遅いんだ。……朝は何時に起きた?」
「んー……5時過ぎ?」
「5時!?そんな早いの?じゃほとんど寝てないじゃん」

