バックの取っ手をきつく握りしめた。
確かに茜先輩にはじめて会ったときも、こうして廊下でぶつかったんだった。
でもそのあと竜憧くんに、"あれはわざとだから気をつけろ"って忠告されたのに、私ぜんぜん聞く耳持たなかった………。
ぎゅっ……‼と、かたく瞼を閉じる。
「千歳、どないし」
「わざとだったんですね?」
「…………なに?」
「はじめてのとき、先輩わざと私にぶつかったんですね?話すきっかけを作るために。乃愛ちゃんに頼まれたんでしょ?」
「オレの話聞いてくれんか」
「言い訳は聞きたくありません!私、…………先輩のこと"いい人"だと思ってました!…………バカだった!」
自分の不甲斐なさと、先輩に騙されていたって悲しみが入り交じり泣きたくなった。
それでつい力んで声が大きくなってしまったから、周囲の視線が飛んでくる。
特に女子たちの、興味津々な目が。
「千歳、オレに言い訳させてくれん?」
「ッ」
「なんやオレら痴話喧嘩してるみたいやん?どっか落ち着けるとこで話さん?サボるつもりなんやったら付き合うし」

