だが落ち込んでる暇はない、そんなオレたちの様子を見て、立っていた乃愛がそっと唇の端を上げた。
「ねえ千歳、なんにも覚えてないの?」
「…………え?」
千歳が乃愛を見る。
「……え、えっと……?……あれ?……私……確か……?」
「いいよ、ムリに思い出さなくても」
さっきまで真っ赤な顔でわめいていたくせに、もう笑っている。
オレを突き飛ばすようにどけると、千歳の腕をそっと優しく掴んだ。
「大丈夫?千歳」
「……うん。…………待って…………うーん、覚えてる……けど……思い出そうとすると頭が痛く…………でも、なんか…………すっごく暗くて狭いところに閉じ込めれてたの……………それで乃愛が出てきた…………あれ?待って、あれ夢……?てかここ誰の家?」
「夢じゃないよ、現実だよ。千歳閉じ込められてたんだよ?ほらそこ!その狭い床下収納に」
乃愛は千歳を支えながらキッチンの床を指さした。
「…………え、何がどうなって……そんなことに……?」

