「すぐそっち行く。召集かけとけ」
電話を切ろうとしたが、
「あ、もうひとつ伝えることがあります!」
慌てた声がスマホから漏れた。
『あのォ、……言いそびれたんですけど、ヤツら変なことを言ってきてて……"ラギさんにつたえろ"って……』
いつも冷静に仕事をこなす男なのに、めずらしく歯切れが悪くなった。
「何だ?」
『それが…………笑っちゃいますよ…………。"ラギさんのオンナを預かってる"って、ヤツら抜かしやがって』
「………………"オレのオンナ"?」
思わず声が大きくなったが、幸い周りに人影はない。
『ラギさんにオンナなんかいないじゃないっすか?苦し紛れのハッタリだって、みんな笑ってます』
「……ッ」
『ラギさん?』
「…………あ、ああ、分かった、とにかく今からそっち向かう」
今度こそ通話を切ると、手の中で軋むほどスマホを握りしめた。

