「……」
「……」
今の体勢、逆・壁ドン。顔の距離・推定10㎝。
よく考えたら(通行人にジロジロ見られてるし、)猛烈に恥ずかしくなって、慌てて離れた。
「つまり気をつけなってこと!」
「…………もしかして、まさか、まさかオレを心配してくれてんの?…………ありがとう、東田さん」
竜憧くんの綺麗な瞳が、うるうるっと揺れた。
こんなに真っ直ぐ「ありがとう」なんて言われたのはじめて。しかも彼、すごく感動してるっぽい。
よほど人に優しくされたことないの?
「いや、別に、私は……ッ」
どうも竜憧くんと話していると調子が狂う。
だって嘘みたいに綺麗な瞳なんだもん。
こんなにも混じりけのない真っ直ぐな瞳を見たのは、もしかして生まれてはじめてかもしれない。
まるで彼に向かって風が吹いているような錯覚を覚えた。
でも。
「ご…………誤解しないでね!?別に心配なんかしてないから!それに私は不良と族がこの世で一番嫌いなんだから!竜憧くんが不良ならあんたのことも嫌いだよ‼」
ほんの一瞬、竜憧くんに引き込まれかけたものの、私のなかにある冷たいものが、喉からせり上がって来た。
「不良も族も大嫌い。バカみたい」

