そして、着歴のなかから見慣れた名前を見つける。
「………………モシモシ?椿子か?いまどこにいる?」
電話をかけた相手は双子の妹、椿子だ。
「…………悪ィんだけどひとつ頼まれてくれねぇか?…………そうそう。すっげぇ大事なことなんだ、お前にしか頼めない。……悪ィな。…………こないだオレのアパートの前で会った女の子のことを覚えてる?…………そう千歳……」
いくら千歳が気になっても、ばあちゃんの容態がはっきりしないまま病院を離れるなんてできない。
オレには責任がある。
だから苦肉の策ではあるが、妹の椿子に代わりに行ってもらうことにした。
もし、千歳が待っていたら、代わって事情を説明してもらう為に。
こんなことを頼めるのは世界中で椿子しかいない。
それに幸い椿子は、一度千歳に会ってるから、顔を知っているはずだ。(忘れてなければ)

