でも同時に、そんなことしても、何にもならないとも思う。死人は生き返らない。オレの自己満足でしかない。
「……っ……ッ…!…」
これまでの人生で経験のない感情だ。涙が勝手に込み上げてくる。
千歳のばあちゃんを死なせたヤツらへの怒りか、それとも無力で不甲斐ない自分への苛立ちか分からない。
しばらくして、身体の震えがようやく治まると涙の跡を拭った。
時計はちょうど、約束の3時。
こうしている間も現実は時が刻まれてゆく。
きのうオレが一方的に決めた約束の時刻になってしまった。
千歳が来てくれているかは分からないが…………。
だが、こうなったら、無視してくれる方が有り難いが、来てくれてる可能性もある。
だとしたら大変だ。こうしてる今も、千歳を待たせてることになる。
立ち上がって自動ドアを出た。
病院の外は、建物のなかと別世界だ。皮肉なほど優しい木漏れ日が漏れてる、穏やかな初夏の午後。
ポケットからスマホをとりだした。

