いや、今のオレよりもずっと不安で怖くて悲しくて、もっともっと震えていたはずだ。
そう思ったら、見たはずのない小学生の千歳がすぐ隣にいる気がした。
ばあちゃんが助かることを祈りながら、こんな殺風景な廊下でひとり震えていた千歳。
肩を震わせ泣いていた千歳。
でも、健気な祈りは叶わなかった。
救急車の進路を妨害した、バカな"暴走族"のせいで────
その時、幼い千歳の心は張り裂けたんだろう。血が吹き出て、倒れるくらい、苦しくて悔しくて堪らなかったろう。
その気持ちを想像したら、オレまで震えて涙が溢れた。
千歳に会いたい。
会って、とにかく無性に、謝りたい。
遠い昔、どこかの病院で泣き崩れた幼い千歳を、思いきり抱きしめて「ごめん」って謝りたい。
それでほんの少しでも悲しみがまぎれるなら、オレは何時間でも土下座する。

