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けたたましいサイレンを鳴らした救急車は、走り出してほどなく、一番近くにある大学病院にたどり着いた。
乗り込んだとき同様に、慌ただしく救急隊員たちがばぁちゃんのストレッチャーを運んだ。
「ご家族の方ですね!廊下でお待ち下さい!」
看護師はオレを孫と疑わず、一方的にそう告げてガチャっと処置室の扉を閉めた。
「ッ」
扉が閉まると、廊下にポツンとひとりになり、急に静かになった。壁際の長椅子にすとんと腰を落とす。
……ばぁちゃん……頑張れよ……。
たまに看護師が目の前を、忙しなくいったり来たりする。キュッキュッという床を擦る音がやたら響いた。
じっと自分の両手を見つめた。
さっきまで握ってきたばぁちゃんの指は、小枝のように細かった。ほとんど体温を感じないほど、固く冷たかった。
気づけば手が小刻みに震えている。
千歳のことを、思い出していた。
小学生のとき、自分のばあちゃんを病院に運んだ千歳も、こんな気持ちだったのか…………。

