でも、猫がマタタビに弱いように、不良なら胸踊らせる"魔陀羅"って名を出しても、竜憧くんは高揚どころか眉ひとつ動かさない。
それどころかまったく無反応で固まってしまった。
「…………え?まさか"魔陀羅"も知らない?見たことなくても名前くらい聞き覚えない!?」
「…………え!?……あ、あああ、あー!?魔陀羅ね…………し、知ってる…………かな?」
「だよね、あーびっくりした。それでね、さっきの田母神、その魔陀羅の傘下の族と繋がってるわけ。だから気をつけなよ」
「…………」
「あと他にも、うちの学校は族やってる先輩やヤンキー多いから。さすがに魔陀羅のメンバーはいないけど、竜憧くんて目をつけられやすいって言うか、見てるとなんか心配になってくるよ」
「…………」
「そんな髪してるけど不良じゃないんでしょ?なんで不良なんかになりたいの!?なんか竜憧くんて本当はもっと……」
ここでふと我に返った。
よく考えたら、私なにひとりでこんなに熱くなってんだろう。
しかも今、すんごい至近距離…………。

