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茜先輩と教室を離れるとき、竜憧くんだけじゃなくみんなの視線も突き刺さった。
でも今の私は、そんなの気にしてる余裕なんかない。
「いやァ千歳ってモテるんやなぁ、びっくりしたわ、でもさっきのやつホンマに置いてきて良かったん?なんやオレメッチャ睨まれてるし嫌われた気ぃするけど」
「……」
廊下を先輩と歩いてるときも、心臓はずっとドキドキしたままだ。
ここにいない竜憧くんで頭はいっぱい。おかげで先輩の話がぜんぜん耳に入ってこない。
だって昨日といい今日と言い、また酷いこと言って傷つけた。
彼はいつも優しいのに、ちっとも優しくなれない自分が嫌だ。

