後先考えないで、仲裁しようなんて思ったことを少し後悔した。
でも!
こんなやつらにビビって何も言えないなんて嫌なんだよ!…………悔しいじゃん!私は我慢できない!
「あんたらがどっか行けば?」
「……ンだとてめェ!?」
「女だから許されっと思うなよ!?」
殺気立つ猿たち。
教室の空気がどんより澱んだところで、そっと竜憧くんがイスから立った。
立つとボス猿……じゃなく田母神より15㎝は大きい。
クラスのみんなが、息を飲んだ。
「東田さんはブスじゃない」
まさかいきなり乱闘と思いきや、竜憧くんは田母神を睨んでそう呟いた。
いや…………睨んだと言うより、長い前髪の隙間からそっと見つめただけ。
だけど何故だろう、ヘタに睨むより怒鳴るよりずっと威圧感がある。その証拠に、田母神から薄笑いが消えて、しかも目を反らしたのだから。
「……ハ、ハァ!?このブスが気にいったの?」
「ブスとネクラでお似合いかも」
「あー、ブス専か!?」
それでも自分たちは数で勝るわけだから虚勢を張る。
「ブスじゃないって言ってるだろ」
竜憧くんの声も鋭くなった。いくら身長が大きくても、完全な1対3なのに、彼は全く引かない。

