その男子の背後には、きらきらするシャボン玉みたいな幻影が見える。

「あ」

鼻血。保健室。頭くしゅ。可愛ええ。どばあーっと、一気に甦った。

「なんや"あ"って。待っとっても遊びに来んからこっちから来たわ」

一方、先輩はきのうと変わらず、白く光る歯をのぞかせながら、目が眩みそうなほどのまばゆい微笑みを浮かべてる。

「…………え?え!?あ……!"茜"って……先輩のことですか?」

「あれ?昨日名前言わんかったっけ?茜 廣高(アカネ ヒロタカ)や」

「……!」

びっくり…………、なんてもんじゃない。

確かに遊びに来てとか来るとかなんとか言われたけど、社交辞令的なものだと思ってたから。

「オレのことは"ヒロ"でも"ヒロタカ"でも好きなように呼んで。な?」

「!?」

動揺しまくる私に対し、先輩はとっても親しげに頭をポンポンと撫でてそう囁いた。

集まっていた女子たちが一斉にざわつく。