幸いといえるのは、廊下に彼以外誰もいないこと。
これでも一応嫁入り前の女子だ、鼻血を出してるところなんか、なるべく人に見られたくない。
「……ヒ、ヒィィィィィィ!?」
急いでティッシュで鼻を押さえた。
「うっわ大変やどーしよ!?そや保健室行こ!?保健室‼」
見ず知らずの彼は、こっちが大丈夫?って訊きたくなるくらい青くなって慌てふためき、私の左腕を掴んだ。
でも決してムリヤリじゃなく、優しめのさわり方。
「あの、だいじょぶ、だから……」
「大丈夫ちゃうやん‼めっちゃ血ぃ出でるやん‼横になった方がいいって‼だから保健室…………ってどっち!?」
「……っ。そ、そこ曲がったところ…?」
つい保健室の方向を指差すと、"ひとりで行ける"って言う間もなく、手を引かれて歩き出した。
……な、なんで鼻血出しながら手繋いでんの私?

