オレが魔陀羅でいるかぎり、千歳はオレのものにならない。
千歳を手に入れるためには、魔陀羅を切り捨てなきゃいけないのか?
辞めれば…………何か変わるのか!?
"魔陀羅の総長を辞める。"
ほんの一ヶ月前は考えもしなかったことが脳裏をかすめ、ゾワッと全身に身震いを感じた。
やべぇな、オレ、マジで千歳に惚れてる…………。
「……ラギ?」
真っ赤になったオレを、いかにも不審なものを見る目付きでトウタが見つめる。
「なんかさ、大事なものすべてって、手に入らないもんだな」
自虐的な気持ちになって、つい一人言がでた。
「そりゃそうだろ」
タカシは同意したが、トウタは少し違った。タバコを灰皿に押しつけると、
「そんなメンドクセーこと言ってるからその年で童貞こじらせてンだよ」
「……ド・ウ・テ・イじゃねーよッ‼」
「だいたいなんでそんな面倒な女に惚れたんだ?」
そんなことを訊かれても、理由なんて考えたこともない。
なぜか気になって気になって、気がついたときはもう好きだった。メチャクチャ好きだった。
「アレだろ、どうせ学校で出会ったんだろ?…………例えば机が隣とか?安直なんだよ。つまりな、」

