「…………」

「もう一回訊くけど嘘だよね?」

オレを見下ろす千歳の瞳が、ゆらゆら揺らめいている。

いま、色んな感情が渦巻いてるんだろう。

嘘でもいいから嘘だと言ってと、そう訴えているようにも見える。

苦しい。いつだって、千歳に見つめられると、息切れするほど苦しい。

「…………嘘じゃない」

「う・そ・だ・よ・ねッ!?」

「本当にごめん」

「………………ッ!」

ガラスが砕けるように、千歳の心が破裂する音が聞こえた。…………そんな気がした。

「魔陀羅の総長…………?私……暴走族やらないよねって訊いたよね?………嘘ついたってこと……?」

「ごめんッ……千歳に嫌われなくなかったから」

もう一度腕を抱き寄せようとしたが、それも振り払われた。

「触んないでッ!サイテーッ!なんで嘘ついたの!?暴走族なんか大嫌いだってば‼大っ嫌い‼」

「話聞いて──」

「サイテーだよ‼嫌だもう触んないでッ‼」

見たことないほど大粒の涙をこぼし、千歳はよろけながら走り去った。