mind

普通の高校生 斎藤 新の前に突然現れた、普通じゃない彼女。

☆第一章
*現実か幻覚か/僕
何処の学校にも、七不思議と言うものはあるだろう。僕がこの4月入学したA高校にも。夜、見回りの先生が、いるはずのない小さな子どもを見たとか、誰もいないのに、勝手に開く扉とか。こんなの所詮噂に過ぎない。そもそも、幽霊とかいるなら、見せてみろよ___なんて言っていられたのも、この時まで。

夏休みが終わり、一週間弱。いつも通り、9時ギリギリに学校に到着し席に着く。だが、いつもと違うことに気付く。昨日まで誰もいなかった隣の席に、一人の女子生徒が座っていた。肩にギリギリかかるくらいの黒髪。白い肌。「こんな中途半端な時期に転校生か?」なんて思って軽く頭だけ下げた。チャイムと同時に担任のが入ってきた。そして、何事もないかのようにHRを始めた。___あれ?普通、転校生来たら紹介くらいするよな。
「相澤?井出?…」
あれ……?
「……とう、斎藤!」
…はっ!
「はい」
「どうした?窓の外なんか見つめて」
「いえ…別に」
こいつに気を取られてて、先生に呼ばれたことに気付かなかった。そして、先生はこいつに___気付いてない。見えていないんだ___そう確信した。もしかして、僕は………
"みえるのかもしれない"
いや…夢かも。だって、足もあるし。今まで一回も幽霊なんて見たことないし。そう思って、思いっきり頬を抓る。
「痛っ!」
ってことは、夢…じゃない!?
「お?い、斎藤?何してんだ?」
「あっ、ゆぅ…いえ…」
「そ?か」
危ねえ。"幽霊がいる"なんて言ったら、僕の高校生活が終わる。だいたい、幽霊が見えるとか…"お前は頭、大丈夫か?"って言われるだろ。いや、既に正常じゃないのかもしれないが。
「斎藤」
ものすごく真剣な顔つきで話しかけて来たのは、たまたま、隣の席で、たまたま、同じ部活に入った遠野。
「お前まさか…」
「ゆゆゆ幽霊なんて見えてないぞ!?」
「は?幽霊?なんの話だ?」
「…っ」
「まぁいいけど。」と、軽く流した。
「それより、進路どうすっかなぁって」
「あぁ…」
さっきから、幽霊に見られてる…と言うより、ガン見されてる。背中に突き刺さる、幽霊の冷たい視線が痛い。これは…どうすればいいのか。放っておいた方がいいのか?話しかけた方がいいのか?でも、下手に関わって取り憑かれても嫌だ。
授業中もずっと見られてて、全く集中できない。時折目が合うと、"あんた、気付いてるんでしょ?"的な目を向けてくる。気付いてるよ。
放課後の紅く染まった教室。グラウンドからは、運動部員の声が聞こえてくる。 そこに、僕と、幽霊の二人。背中合わせに、彼女はグラウンド、僕は自分の影を眺めていた。お互い、どちらかが話すのを待っている。ふと振り返ると、夕陽に染まるグラウンドをどこか懐かしそうに眺めている彼女に、意を決して話しかけようとした時…
ガンッ!
「って…」
頭突き!?
「ごっごめんなさい!大丈夫!?」
「思いっきりふりかえるんじゃねぇ??」
「悪気はなかったの!」
「ったく」
今、幽霊に…
「で?なに?」
幽霊って触れるんだ___
「ちょっと!聞いてんの?」
「あぁ…」
「で、あなた、私がみえるの?」
「あぁ」
「だったら、なんでもっと早くに話しかけてくれなかったのさ!」
「見えない奴(ユウレイ)に話しかけてたら、変人だと思われるだろ?」
「人のこと、チラチラみてる時点で、変態だと思うけど?」
「なっ!?」
「まぁ、いいけど」
こっちとしては、全然良くない気が…(^^;;
「でも、私は嬉しかった」
嬉しかった?
「今まで、誰も気付いてくれなかったんだもん…。気付いても、無視されてきた」
夕陽を背にした彼女の表情は見えない。
「だからね、嬉しかった」
向けられた微笑みに、どきっとする。
「な?んてね☆どきっとした(^∇^)?」
っ!
「その顔は図星か?」
「一瞬でも可哀想だと、同情した僕が馬鹿だった!」
「何その言い方。酷くな?い?」
「俺の同情を返せよ!」
「……ごめんね。気付いてもらえたのが嬉しくて、舞い上がっちゃった」
シュンとして、俯いてしまった。
「ねぇ!あたしと、友達になって!」
「はぁ!?」
幽霊と……友達?
「だって、誰も気付いてくれないし、あんただけだもん…」
「断る」
「そうだよね…幽霊だもんね」
「…ごめん」
鞄を手に、教室を出た。

普通の高校生の僕が出会ったのは、___幽霊でした。

*ミエル、ミエナイ/変人
翌日、教室に行くと、既に彼女は来ていた。「おはよう」と笑顔で手を振る彼女に思わず、手を振りそうになる。
"そういえば、こいつ幽霊だったな"
何もないところに手を振るなんて、危うく変人になるところだった。まぁ、昨日は散々彼女に"変 態"呼ばわりされたから"変人"くらいならまだいい……わけあるかっ!
僕は、ただ真っ直ぐに自分の席に向かう。
「よっ!斎藤」
そこにいたのは遠野。
「おぉ…おはよ」
「朝から暗いな。何かに取り憑かれてんじゃね?」
「まぁ、何かに取り憑かれてるかも…」
普段そんなことを言わない僕の予想外の返事に、遠野は目を丸くしている。実際、昨日彼女と話したのは夢じゃなかったわけだし。
「斎藤…お前、大丈夫か?」
「多分ね」
窓の方に目を向けたら、ものすごい形相で僕を見る彼女と目があった。
「取り憑かれてるって、どういう意味よ!」
僕はただ"黙れ"と口パクで言う。
「ふ?ん。斎藤は私たちの関係バレたくないんだ?」
私たちの関係って…何だよ(ーー;)
「お前…マジでどうした?窓の外ばっかりみて」
本気で心配してくる遠野。
「え?」
「何か、すごい思い詰めた顔してるから…」
「別になんもな…」
「席に着け?」
担任が教室に入って来た。
「なにが、なんもないよ。あたしがいるのに」
頬杖をついて横目で見てくる。
「それとも、やっぱり、あたしが見えないからダメなの?ねぇ…」
「斎藤?」
「は、はい!」
「真剣な顔して、窓の外なんか眺めてるな?」
そっか。先生にも見えてないのか。なんて、冷静に考えてる自分。

授業もまったく集中できない。
担任の授業でも、
「斎藤?また、外みてんのか?そっちじゃ無くて、黒板みろ?黒板」
彼女にガン見されてます。はい。
「ねぇ、斎藤」
いきなり彼女に名前を呼ばれる。
僕は彼女の方をチラリとみて、ノートの隅に"静かにしろ"と書いて見せた。
「静かにしろ?なんで?」
"授業中だから"
「いいじゃない。どうせ、あたしの声なんて聞こえないんだから」
そういう問題じゃない。
"集中できないから"
「なにそれ、酷くない?」
僕は、その言葉を無視した。こうでもしないと……。
「ねぇ…」
頼むから…
「ねぇっば!」
…黙ってくれ!その気持ちがそうさせたのか、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「なんで、無視するのよ!」
暫くして、やっと黙ったかと思った。だが、次の瞬間左頬を鋭い痛みを感じる。鳩が豆鉄砲を食らったかのように固まる僕を見つめる彼女の目は……泣いていた。






|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]

終われ(´^p^`)