✡。:*柊語り













洗面所で頬を洗う。なかなか乾いた血は取れず、香りも、兄に対しての恐怖も解けなかった。


「おにーちゃん・・・・・」























・・・・・・・・・・・



































「柊ー?いないのか?」

「行こうぜ、アイツ運動出来ねぇしよ」

「ぼ、僕いるよ。僕も遊びたいよ」

「あーまた今度な?もうメンバー集まっちゃって」





















「柊、ここ解けるか?」

「3xです」

「おぉ、正解だ。みんな柊を見習えよー」

「おーおー、よく出来ましたねー」

「さすがあの風吹楓の弟だよなー」























「あっれ?いつも100点取ってたじゃん」

「なのにこのザマ、やっぱ頭の良さは遺伝しねぇのかな?」

「ちょっとやめて上げてよw」


























僕はどうすればいいんだろう。


















おにーちゃんのあのことは悟られないようにしてるけど、おにーちゃんに前科があることは、きっとみんな知ってる。











僕が通ってるこの中学校は、おにーちゃんも通った学校。おにーちゃんはこの学校の校長先生を殺してしまったことがある。みんな校長先生には文句や不信感を持っていたけど、その気持ちを背負って、僕のおにーちゃんは先生を殺した。


「これはいい事なんだ。悪い事じゃない」


家に帰ってブツブツと言っていた言葉。そのとき僕はまだ分からなかったけど、中学校に入学してから分かった。


「君のお兄さんはとても悪いことをしてしまったんだ」


中学1年のときに校長先生に呼び出され、そう告げられた。僕のおにーちゃんは校長先生を殺した、と。
















──────それから僕の周りの人達は一変した。



















「人殺し」と呼ばれる日々で、「復讐してやる」と友達からも裏切られた。先生も「弟に人殺しの遺伝が」とか理科の先生が言ってた。
でも、僕は思う。あの時、おにーちゃんは「いい事をした」と言った。だから、いい事なんだと思う。
















僕は「風吹楓」じゃない。僕は「風吹柊」なんだ。