逃れられない「イト」

・・・・・・・・・




























「っ」


嫌な感じがして飛び起きる。窓から外を見れば、もう街灯しかついていない。現在2時丁度。


「・・・もう真っ暗だ。っ、おにーちゃん!」


男の子はロフトの梯子を駆け下り、階段を上り、最上階の真ん中の扉へ。そこは男の子の兄、風吹楓の部屋だった。


「おにーちゃん!おにーちゃんやめて!」


ドンドンと扉を叩く。返事はない。


「おにーちゃん、隠さないで。僕にも教えてよ!」


今度はガチャガチャとドアノブを回す。
すると──────


「お前はなにも知らないままでいい・・・」


弟、柊は身体を強ばらせる。
兄、楓の右手には確かに刃物が握られている。目が狂気に染まり、いつもの兄とは違う気を発していた。
────と、柊はそう思った。楓の両手が頬に添えられ、額を合わせられる。


「柊、よく聞くんだ。俺はとても悪いことをした。
人を殺すという、とても悪いことだ」

「おにーちゃん・・・」

「何故殺したのかは言えない。お前には、純粋な気持ちでいて欲しいからだ。俺の二の舞にはならないで欲しい・・・」


べっとりと鼻につく血の匂いが部屋から香る。楓が両手を離せば、柊の頬にも血がついていた。


「すまない・・・。頬が汚れてしまったな。
洗面所で洗ってきな」